浜名湖のボート転覆事故、同じ教師として、親として、聞けば聞くほど胸が詰まる思いがします。娘さんを亡くした親御さんの思いはいかばかりか…。友人を亡くした子供達の思いは…。
同時に、強い憤りを感じます。報道される状況を見る限り、どう考えても湖にボートを出してはいけない状況だったとしか思えません。引率の教員と施設の管理者は糾弾されて然るべきです。
そんなことをしても失われた命はかえってきません。しかし、あまりにも判断が甘い。
たとえ「出せる」と思えても「出してはいけなかった」のです。「これぐらいは」とか「だいじょうぶだろう」とか絶対に考えてはいけません。教師は子供の命を預かっているのですから、常に、絶対に、楽観的な方向へ判断を持って行ってはいけないのです。
仮に施設の人間が可能だと判断したのだとしても、教育者としてはその判断自体を判断しなくてはいけないはずです。波高何メートル、風速何メートルまでは出航可能、という基準はあったようですが、実際にそれに遭遇する子供のことを直接的に一番よく理解しているのはその場にいる教師なのですから…。
・朝、学校に来ていない生徒の家庭との連絡をすぐに取らずにいたら、実は家出をしていた。屋外に身を隠しており、捜索し保護するのに夜中までかかった。
・スキー遠足に行き、麓の様子だけを見て、山の上の天候が荒れている可能性と子供のスキー技術をや装備をを考慮せず、スキー場頂上まで連れて行き、動けなくなる子供が出て立ち往生したが、なんとか自力で下山してきた。
・台風が近づいていて、一刻も早く下校させるべきなのに、台風の目に入った状態を通り過ぎたと勝手に判断して授業を継続、予想以上に速い台風の動きのため、下校の時機を逸してしまい夜遅くまで学校に子供を置いておかざるを得なくなったが、その速さ故に天候回復も早く事なきを得た。
・運動会で目隠しをして走る競技を実施、足の速い子供が向きを間違えた上に全速で走り出し、テントの支柱に激突、ケガをしたが、幸い軽傷で済んだ。
この20数年間で、自分が見聞したり、体験したりしたものだけでもすぐにこれだけのことが思い浮かびます。細かいことをいえば、まだまだあります。
もちろん、どれも大事には至っていないのですが、一歩間違えば命に関わることになりかねません。
多分、全国の教育の現場では類することがたくさんあると思います。
教師としての子供や教育に対するスタンス、自然現象や野外活動も含めた諸活動についての知識、判断を希望的方向に振らない考え方…。求められることは様々ありますが、どれもこの仕事をしている以上、必要なことです。
今回の事故は、どう考えてもそれらがその場にいた関係者に欠如していたとしか思えません。
…しかし、冷静に考えると、誰も中止の判断をしなかったこと自体が相当不思議です。
仮にボートを出すのがまずい、と判断した人間がいても、最終判断した人物に伝えていなかったか、伝えられても考慮しなかった可能性もあります。…恐ろしいことですが、もしかしたらこれが本質かもしれません。もちろん、当事者ではないので何とも言えませんが…。
このようなことが二度と起こらないように現場の人間は努力するしかありません…。
亡くなった子供さんのご冥福を祈ると共に、親御さんには心からお悔やみを申し上げます。
(なお、事故の詳細なりが明らかになり、大きな事実誤認があった場合、この記事は削除します。)